平成24年度成果報告

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在宅医療連携拠点事業成果報告書

在宅医療連携拠点事業成果報告スライド

1 地域の在宅医療・介護が抱える課題と拠点の取り組み方針について

今回平成24年度在宅医療連携拠点事業(以下、拠点事業)で目指す、多職種連携で機能する地域連携在宅医療システムの構築(スライド1)は、医療法人ナカノ会の開設理念(スライド2)と一致し、医療法人ナカノ会が過去13年間活動してきた事業である。

多職種連携で機能する地域連携在宅医療システムの構築(スライド1)
多職種連携で機能する地域連携在宅医療システムの構築(スライド1)
医療法人ナカノ会の開設理念(スライド2)
医療法人ナカノ会の開設理念(スライド2)
チーム医療実践のための条件(スライド3)
チーム医療実践のための条件(スライド3)

多職種連携のチーム医療(介護)を実践するため要件として、1)連携のコストが安いこと、2)各職種スタッフが優秀な事を挙げ、1)の要件を満たすために、ICTのフル活用、2)の要件を満たすため、教育環境の充実を開設理念として挙げ、活動してきた(スライド3)。これら医療法人ナカノ会開設以来の13年間の活動は、今回の拠点事業の理念そのものであり、これらの活動は、平成24年12月に、「在宅医療が日本を変えるーキュアからケアへのパラダイムチェンジ」のタイトルで一冊の本にまとめて出版した(参考文献)

1)ICTのフル活用

開業当初から法人内メーリングリスト(以下ML)を用いて、情報交換を行い、法人内でのICT化は、本拠点事業開始前の時点で、ほぼ完成の域にあった。一方、法人外に向けてのICT化は、セキュリティーの問題などクリアしなくてはならない問題があり、今後の課題であった(他法人との多職種連携チームは、既に患者ごとに構築できていた)。本拠点事業で、クラウドコンピューティングの技術を用いて、これらの問題をクリアしようと試みた。

スタッフミーティング(スライド5)
スタッフミーティング(スライド5)

2)教育環境の充実

毎朝8時30分から開催されるスタッフミーティングが法人内スタッフの教育の場である(スライド5)。法人内MLで、昨日看取りがあったなどの情報はスタッフ全員で事前に共有しているため、スタッフミーティングでは(申し送りではなく)討論が可能となる。

2006年11月からは、在宅ケアネット鹿児島ML(以下、CNK-ML)を立ち上げ、CNK-MLを通じ、過去10回の在宅医療の勉強会を開催してきた。 http://nakanozaitaku.jp/renkeikyoten/carenet.html

CNK-MLは、会員1500名程参加の全国規模のMLになってきていて、日本の医療・介護問題が幅広い観点から議論されている(参考文献)。今回の拠点事業に関する情報交換も、CNK-MLを通じて活発に行われた。

2 拠点事業の立ち上げについて

ナカノ在宅医療連携拠点センター理念(スライド6)
ナカノ在宅医療連携拠点センター理念(スライド6)

1、で述べたように、本拠点事業は、過去13年間、医療療法人ナカノ会で実践してきた事業そのものである。拠点事業所名をナカノ在宅医療連携拠点センターと命名し、本拠点事業の活動の中では、医療法人ナカノ会で過去13年間蓄積してきた在宅医療の経験・知識を幅広く鹿児島市地域に開放することを、ナカノ在宅医療連携拠点センターの開設理念とした(スライド6)。

本拠点事業を立ち上げるにあたり、多職種連携チームは各在宅患者別に既に出来上がっていたので、多職種連携のチームメンバーを選定するには、全く苦労はなかった。

しかし、行政(鹿児島県、鹿児島市)や医師会との本格的な連携は、本拠点事業がスタートであった。行政や医師会との連携に関しては、2012年6月15日に、鹿児島県を介して、県内で採択された3拠点事業施設と鹿児島県医師会、各地方関連施設に働きかけて、鹿児島県挙げての在宅医療の連携・教育体制が構築された。これらの活動は、2013年1月19日、20日開催の鹿児島県チームリーダー研修会に結びつき、鹿児島県各地、各施設から260名の参加を得て、大きな成果を得ることができた。

医療法人ナカノ会では、地域の在宅医療(介護)推進に関しては、過去13年間、ほぼ個人(法人)レベルで活動してきたが、公的機関(行政)が動けば、これ程大きな活動が広がるのかと非常に参考にになった。今後は、行政や医師会などと積極的に連携して、更に拠点事業を推進していきたいと考えている。

本拠点事業の活動としては、4回の勉強会(かごしま多職種連携勉強会)を通じて、CNK-MLへの参加を促し、またCNK-MLを通じてのディスカッション、広報、勉強会の開催、その後の懇親会で、顔の見える関係を広げ、多職種連携の参加メンバーを増やしていった。

かごしま多職種連携勉強会に鹿児島県医師会の後援をもらうために、後援依頼を4回申請したが、医療法人ナカノ会の私的(個人的)な活動には、鹿児島県医師会としては後援許可できないということで、結局後援許可はいただけなかった。この辺、ナカノ在宅医療連携拠点センターとして、鹿児島県医師会への働きかけが弱かった点は否めない。今後の課題としていきたい。

新たに雇用したケアマネ資格を持つ社会福祉士と看護師により、地域包括支援センターや医療・介護施設へのアウトリーチをかけ、多職種連携の参加メンバーを増やした。また、今までそれぞれ担当の看護師が対応していた相談受付―新患面談―退院時共同指導に、専任の社会福祉士と共同で対応する事で、チーム全体の情報の一元化が図れ、より質の高い多職種連携が可能となった。
第3回かごしま多職種連携勉強会では、グループワークを行い、多職種連携の課題抽出を行った。

3 拠点事業での取り組みについて

(1) 地域の医療・福祉資源の把握及び活用

新たに雇用したケアマネ資格を持つ社会福祉士と看護師により、鹿児島市や地域包括ケアセンターに働きかけて、地域の医療・福祉資源のマップを作製し(スライド7)、地域の医療・福祉資源の把握をした(スライド8)。

 

医療・福祉資源マップ(スライド7)
医療・福祉資源マップ(スライド7)
医療・福祉資源表(スライド8)
医療・福祉資源表(スライド8)

また実際に医療・福祉資源に訪問を行うなどして数字だけでは見えてこない、地域の現状を拾う事が出来た。例として挙げれば、医療機関や居宅支援事業所からはどの時点で在宅医療へ継いでいくか困っているといった問題点や民生委員からは地域住民から相談されるが、誰に継げば良いか判らないでいるといった声を拾う事ができた。この事により現状を相談業務へ反映する事ができ、在宅医療導入時の負担軽減やサポートに繋がった。

(2) 会議の開催(地域ケア会議等への医療関係者の参加の仲介を含む。)

必要に応じたケアカンファレンス(スライド9)の開催や、紹介先の病院に出向いての退院前カンファレンス(スライド10)は、また定期的な(現在は4週間に1回の)服薬カンファレンス(スライド11)は、開業の13年前からルーチン業務として実践している。これらの活動は、地域における多職種連携に関わるスタッフへの在宅医療の教育・啓蒙活動と言う側面が大きい(参考文献)

ケアカンファレンス(スライド9)
ケアカンファレンス(スライド9)
退院前カンファレンス(スライド10)
退院前カンファレンス(スライド10)
服薬カンファレンス(スライド11)
服薬カンファレンス(スライド11)

今回拠点事業として、多職種連携スタッフ、行政、医師会、地域住民に向けての勉強会(かごしま多職種連携勉強会)を4回開催した(スライド12)。また、第3回かごしま多職種連携勉強会では、グループワーク(ワークショップ)を行い、多職種連携の問題・課題抽出を行った(スライド13)。

かごしま多職種連携勉強会(スライド12)
かごしま多職種連携勉強会(スライド12)
多職種連携の課題抽出(スライド13)
多職種連携の課題抽出(スライド13)

(3) 研修の実施

2012年度研修・実習受け入れ状況(スライド14)
2012年度研修・実習受け入れ状況(スライド14)

医療法人ナカノ会は、2008年4月から鹿児島大学医学部の6年生を対象にした実習施設となっていて、毎年10名程度の医学生が実習に来る。

2012年度も4月~6月に10名の医学生が来て、学生実習を行った。実習内容は、朝のスタッフミーティング参加、訪問診療同行、訪問看護同行、ショートレクチャーなどである(スライド14)。また、2カ所の看護学校の学生や他訪問看護ステーションのスタッフに対し、訪問看護の実習(同伴訪問看護)を実践している。2012年4月1日~2013年3月31日までの医療法人ナカノ会の研修(見学)者は、112名である。http://nakanozaitaku.jp/katsudou/kengaku.html はホームページ上の掲載の許可をいただいた45名の氏名と所属である。

(4) 24時間365日の在宅医療・介護提供体制の構築

診診連携カンファレンス(スライド15)
診診連携カンファレンス(スライド15)

平成24年度の診療報酬改定で、機能強化型在宅療養支援診療所の制度の導入で、Iクリニック(無床診療所)と連携して、24時間365日体制を構築している。毎月一回の診診連携カンファレンスを開催し、患者情報、看取り患者の情報交換などを行っている(スライド15)。平成25年度からは、Hクリニック(無床診療所)、ISクリニック(有床診療所)、も診診連携に加わり、連携の輪を広め、地域に24時間365日の在宅医療・介護提供体制の構築を推進していく予定である。

また、2014年2月オープン予定のケアタウン・ナカノでは、サービス付き高齢者住宅と複合型サービスの導入を計画していて、24時間365日の在宅医療・介護サービス提供体制の構築中である。

(5) 地域包括支援センター・ケアマネジャーを対象にした支援の実施

アウトリーチ活動(スライド16)
アウトリーチ活動(スライド16)

新たに雇用したケアマネ資格を持つ社会福祉士と看護師により、地域包括支援センターや医療、介護施設へのアウトリーチをかけ、多職種連携のチームメンバーが増加(連携の無かった医療機関等からの在宅医療導入の相談・紹介が増加)した(スライド16)。

地域包括支援センターに対する、拠点事業の周知とナカノ在宅医療連携拠点センターの紹介を行い、患者さんの情報交換、勉強会(特に第3回かごしま多職種連携勉強会)への参加依頼などを行った。

支援では医療機関の地域連携室と共に退院調整に関わる、在宅医療の導入においてケアマネージャーと共に患者・家族と面談を行うなどした。アウトリーチ時に挙げられた問題点「在宅医療の説明に不安がある」等の改善となり、患者・家族の安心感やスタッフの支援へつながる結果となった。

地域包括支援センターへは、小まめに足を運び事業に理解を示して貰え、今後の地域ケア会議への参加も促される事となった。地域包括支援センターは地域包括ケアの主軸を担っていくとされる存在である。密に連携を持ち地域の問題解決に取り組み、住みやすい地域づくりの一端を共に今後も担っていかなければならいと考える。

(6) 効率的な情報共有のための取組(地域連携パスの作成の取組、地域の在宅医療・介護関係者の連絡様式・方法の統一など)

カナミックシステム導入勉強会(スライド17)
カナミックシステム導入勉強会(スライド17)

新たに雇用したケアマネ資格を持つ社会福祉士と看護師により、今までそれぞれ担当の看護師が対応していた相談受付―新患面談―退院時共同指導に、専任の社会福祉士と共同で対応する事で、チーム全体の情報の一元化が図れ、より質の高い多職種連携が可能となった。

法人外に向けてのセキュリティーも考慮に入れて、グラウドコンピューティングの技術を用いた多職種連携のためのICTシステムであるカナミックシステムを導入した。それに伴い、2012年11月26日には、鹿児島県医師会館で、関連スタッフ(多職種)を集め勉強会を開催し、約70名の参加者を得た(スライド17)。

現在、このカナミックシステムを利用して、実際の実務(多職種連携)で、システムの実証実験を行い、本カナミックシステムを更に利用しやすい多職種連携システムに進化させようと、メーカーと共同でシステムのレベルアップにチャレンジしている(現場で実際に使用することで、メーカー側にフィードバックして、更に使い勝手の良いICTシステムに進化するように働きかけている)。

(7) 地域住民への普及・啓発

地域住民への普及・啓発(スライド18)
地域住民への普及・啓発(スライド18)

地域住民に向けての懇話会(西地区在宅医療懇話会)を医療法人ナカノ会の医師(中野)が講師として、3回開催した。参加者は、第1回懇話会が25名、第2回懇話会が14名、第3回懇話会が7名であった(スライド18)。

我々のアウトリーチ(広報)活動が不十分だったのか、本拠点事業が国の事業ということが地域住民(行政末端)に周知されておらず、医療法人ナカノ会の個人的な宣伝活動と誤解され、第2回懇話会では、会場に地域の公民館を借りることすらできず、集会所での開催となった。

全体的に参加者が少なく減少傾向であった理由として、今までの広報活動は、ICT(CNK-MLなど)を使っての広報が多かったが、直接住民への働きかけが不十分なためと考えられた。今後、地域住民への働き掛けは、アナログ的なアプローチも重要と思われた(直接足を使っての働きかけはしたが、不十分であった結果と思われる)。

4 特に独創的だと思う取り組み

特に独創的だと思う取り組み(スライド19)
特に独創的だと思う取り組み(スライド19)

特に独創的だと思う取り組みについては、(スライド19)にまとめた。そもそも、本拠点事業が目指す事業は、13年前の医療法人ナカノ会の理念であり、多職種連携で機能する地域連携在宅医療システムの構築を目指した医療法人ナカノ会の13年間の取り組みそのものが独創的で先進的な取り組みと考える。

今回の拠点事業では、医療法人ナカノ会が過去13年間行ってきた事業(で得た経験・知識)を、鹿児島県(肝属郡医師会立病院の拠点事業と連携して)や、九州全般(九州拠点事業MLの開設、南九州・沖縄ブロック発表会の開催など)に拡散、推進することができ、連携拠点施設間の連携を図ることができ、大いなる成果を上げたと考える。

医療法人ナカノ会の開設以来13年間の活動におけるICTの活用は全国でも先進的なもので、特にCNK-MLの活用における全国規模でのICTの活用は、全国の拠点事業所間での情報交換でも有効であったと思われる。

また、CNK-MLを通じての2006年~2010年までの過去10回に渡る在宅医療の勉強会http://nakanozaitaku.jp/renkeikyoten/carenet.html は、本拠点事業の以前に実践した教育活動で、先進的な取り組みであったと言えよう。

5 地域の在宅医療・介護連携に最も効果があった取り組み

本拠点事業の各タスクに対する取り組みは、(スライド20)にまとめた。この中で、ナカノ在宅医療連携拠点センターで特徴的で、地域の在宅医療・介護連携に最も効果があった取り組みは、(スライド20)の6、ICTの活用、であろう。前述のようにCNK-MLを介しての、在宅医療の推進普及の活動は、2006年から開始している。

CNK-MLの経験から、今回、新たに、九州地域17カ所の拠点事業所の連携を図るために、2012年11月7日に、ナカノ在宅医療連携拠点センターでは九州在宅医療連携拠点MLを立ち上げた。本MLを利用して、九州各拠点事業所間の情報交換が可能となり、2013年2月3日には、鹿児島県医師会館にて、南九州・沖縄ブロックの拠点事業の発表会を開催でき、90名の参加者で活発な討論が行われた(スライド21)。http://nakanozaitaku.jp/renkeikyoten/katsudoublock.html

拠点事業(スライド20)
拠点事業(スライド20)
南九州・沖縄ブロック拠点事業発表会(スライド21)
南九州・沖縄ブロック拠点事業発表会(スライド21)

また、2013年3月9日には、同じ鹿児島県の拠点事業である肝属郡医師会立病院の拠点事業のシンポジウムに呼ばれ、中野(医療法人ナカノ会)は、基調講演を行い、シンポジウムに参加した。

医療法人ナカノ会は、都市部の鹿児島市で、効率的な在宅医療システムが必要だと考え、13年間活動を通じて、多職種連携で機能するネットワーク型在宅医療・介護システムを構築し、更なる進展を目指し、本拠点事業に応募した(参考文献)

一方、肝属郡医師会立病院は、過疎地域で、医療崩壊が起き、2004年には17名いた常勤医が、2012年には7名に減じ、医療、介護関係者がみんな困っている中で、必要に迫られて、多職種連携チームが誕生した。医療・介護資源が豊富にある鹿児島市に対し、過疎地である肝属地区では、資源も少ない、人も少ない、サービスも少ない状況で、どのような医療・介護サービスを提供するかに苦慮して、結果的に、多職種連携チームが創出された。

このように本シンポジウムでは、必要に迫られ地域包括ケアシステムの構築が求められている過疎地に、都市部で培われた医療法人ナカノ会の在宅医療・介護の経験と知識が活用できる、新たな連携(拠点事業間の連携)の可能性が示唆された(スライド22.23)。

肝属郡医師会在宅医療連携拠点事業シンポジウム(スライド22)
肝属郡医師会在宅医療連携拠点事業シンポジウム(スライド23)

肝属郡医師会在宅医療連携拠点事業シンポジウム(スライド22、23)

6 苦労した点、うまくいかなかった点

苦労した点、うまくいかなかった点(スライド24)
苦労した点、うまくいかなかった点(スライド24)

苦労した点、うまくいかなかった点については、(スライド24)にまとめた。今回の拠点事業を通じて痛感したことは、地域を動かすには、行政や医師会など公的機関との連携が必須だということである。鹿児島県には音頭をとって、地域の関係者(ステークスフォルダー)を広く、多く集めていただき、2013年1月19日、20日には、鹿児島県地域リーダー研修会が開催でき、大きな成果を上げることができた。このように本拠点事業では、鹿児島県には大いに感謝しているのであるが、全体的にみれば、鹿児島県や鹿児島市などの行政の、在宅医療への周知度、認識はまだまだ低いと言わざるを得ない現状と考える。むしろ、医療・介護サービスが不足している肝属郡医師会立病院みたいな過疎地域の行政の方が、その認知度は高いような印象であった(肝属郡医師会立病院のシンポジウムに参加して)。

本拠点事業では、鹿児島県医師会の副会長や在宅医療担当理事にも多大な協力をいただいたが、逆に鹿児島県医師会からは、拠点事業の勉強会の後援もいただけないくらい本拠点事業は地域医師会には認知度の低いものであった。

本拠点事業で学んだことは、地域を動かすには、以上公的機関のステークスフォルダーと密接な連携が必要あることである。今後、行政や医師会などと更に密な連携を模索して、鹿児島地域に、機能する地域包括ケアシステムを構築していきたいと考える。

また、地域に向けた勉強会では、直接、地域住民、行政に向けたアプローチが必要で、ICTとは逆のアナログ的アプローチ(直接的な働きかけ)も重要なことを学んだ。

これらの経験をもとに、今後、ICT、顔の見える関係を使い分けながら、鹿児島市地域に本格的に機能する地域包括ケアシステムを構築していきたい。

7 これから在宅医療・介護連携に取り組む拠点に対するアドバイス

在宅医療・介護連携拠点の目指すものは、各地の事情に即した、地域包括ケアシステムの構築である。これから在宅医療・介護連携に取り組む拠点においては、先に拠点事業に取り組んだ事業所の経験と知識を共有して、地域にあった独自の地域包括ケアシステムを構築することである。

その意味では、5、で紹介した、医療法人ナカノ会と肝属郡医師会立病院のような拠点事業所間の情報交換、連携は非常に重要と思われる。

8 最後に

ケアタウン・ナカノ構想(スライド25)
ケアタウン・ナカノ構想(スライド25)

本拠点事業とは別に、医療法人ナカノ会では、ケアタウン・ナカノ構想を抱き、2014年2月には、第1期計画を開始予定である(ただ今第1期計画施設を建設中)。(スライド25)にその全体構想を示したが、第1期計画では、サービス付き高齢者住宅、複合型サービスを取り入れ、既に展開している在宅医療と連携して、24時間365日の在宅医療・介護サービス提供体制を構築し、最期まで地域で生きる(看取りに対応した)在宅医療・介護システムの構築を目指す。この構想は、狭く患者を囲うのではなく、ケアタウン・ナカノを在宅医療・介護の連携拠点として、広く、鹿児島市全体に多職種連携で機能する在宅医療・介護システムを提供すもので、ケアタウン・ナカノ構想が在宅医療連携拠点事業そのものなのである。

医療法人ナカノ会の13年の歩みと、本拠点事業、ケアタウン・ナカノ構想については、「在宅医療が日本を変えるーキュアからケアへのパラダイムチェンジ」のタイトルで一冊の本にまとめた(参考文献)