[2011.5.13 見学] 久松 憲明 氏 感想文

            おぐらリハビリテーション病院 久松憲明(リハビリテーション科専門医)

 先日の研修はお忙しい中、ご丁寧に対応していただきましてまことにありがとうございました。
私は現在勤務しています病院でもほんの数件ですが訪問診療を担当しているのですが、 在宅診療を専門にされているクリニックとはどのような雰囲気で運営をされているのか以前から興味があり、 今回研修をお願いした次第です。
ホームページ等で事前に情報収集をしていたので、ICTを駆使した様々なシステムは知識 としてはあったのですが、実際に現場で確認させていただき、その効率的な運用の有効 性を実感しました。主治医制はとらずに常勤の医師が1ケ月で全患者さんを1度は診療さ れているそうで、24時間対応ということを考えると特定の医師に負担がかからないし、 また患者さんの病状についてもディスカッションできるという点でいい仕組みであると思 いました。更には朝にカンファレンス、16件の訪問診療、その後にまたカンファレンス というように、在宅診療では入院施設と違い患者さんがすぐ近くにいませんので、常に情 報共有をはかる工夫、努力が必要だということが理解できました。また素朴な疑問として、 訪問車両の駐車場はどうするのだろうと思っていたのですが、専属のドライバーが常に車 で待機されているというスタイルで対応されており合点がいきました。 訪問診療後は中野先生に熱くレクチャーをしていただきました。
 「キュアからケアへのパラダイムシフト」、「看取りは結果であってより良く在宅で生活 するという目的の延長上にある」「不必要な医療をやらないのが在宅医療」というお言葉は、 深い意味を感じました。ただキュアベースでやってきた医療職がそう簡単にはケアベース の医療にはシフトできないだろうというのは、リハビリテーション科というキュアとケア がいわば混在している医療を専門としてやってきた人間としての率直な感想です。
 勿論、キュアとケアの境界線、不必要な医療と必要な医療との境界線、キュアとケアの バランスをどうとるか、ということは患者さん、ご家族、医療スタッフ個々でやはり考え 方が違うのでしょうから、そのためにもナカノ在宅医療クリニックのように、丁寧に患者 さん方とお話し、スタッフ同士でも様々な手段を用いてコミュニケーションをとるという ことが大切なのだろうと思います。
 一挙に16人の患者さん方の生活の現場を生で見ることができただけでも貴重でしたし、 リハビリテーション科医師として在宅診療にしっかりと関わることの必要性、重要性も感 じることができました。
 とても有意義な研修の機会を与えてくださいました中野院長先生はじめクリニックのス タッフの方々にこの場を借りてお礼申し上げます。