[2010.12.02-03 見学] 瀬沼 智洋 氏 感想文

先日は、先生のプレゼンテーションと在宅診療に同行させて頂きまして、大変勉強になりました。
私、鹿児島には初めてうかがったのですが、鹿児島のおいしいお酒とお料理も頂きましてとても楽しい訪問にもなりました。
本当にありがとうございました。

在宅診療に実際に同行して現場を見て、病院だと「治療の中に生活が付随する」ことになるのが在宅診療だと、「生活の中に治療が付随する」
ということになるということを実感しました。

普段の生活の中で治療が行われるので、 病気の治療だけではなくて、生活全般のアドバイスもできることが印象的でした。
ある患者さんが咳き込むので、お部屋の湿度とベットの関係を きめ細かくアドバイスされていたり、介護する家族の方の健康状態や家族関係も把握して、
家族の方にもお薬を処方したり、悩みの相談をきいてあげたり。
病院治療では、家族を含めて生活の場が見れないので、ここまできめ細かくできないのではないかと思いました。
患者さんと家族の話をよく聴いて、総合的に見立てて 不安をなくすようにアドバイスされていることも、とても印象に残りました。

鹿児島は坂の多い街と感じましたが、病院への通院治療だと 患者さんは特にバリアも多くて大変なのではないかと思います。
その点、在宅医療だと患者さんの負担は少なくてすみます。
テキパキと14人の患者さんを見られていて、とても効率的なルートを組まれていることも感じました。

ICTを活用していく際にはセキュリティーをしっかり設計しておくことが必要なのかと思ってうかがいましたが、 セキュリティはシステムの堅牢性ではなくて、リテラシーの問題ということも、目から鱗でした。
これも私のなかでは、パラダイムシフトでした。

「キュアからケア」へのパラダイムシフトの先生のお考えは、医療のみならず、今後の社会全体が目指すべき基本概念だと実感しました。
世の中、格差社会と言われており、言いようのない閉塞感を感じることがありますが、現状を受け入れることから始め、 競争ではなく共生を目指す社会が幸福だと思います。
その上で個人の力ではどうにもならない社会的不平等には、再分配等の政策も必要と考えます。

先生の言われていた村上春樹氏の小説のテーマでもあるシステムと人間の関係についても、これまでの日本社会の巨大なシステム(キュア)によって
人間が思考停止に陥っている状況から、人間本来の物語を作っていく(ケア)ことなのではないかと、感じた次第です。

いろいろなことを考える機会を与えて下さり、本当にありがとうございました。
奥様はじめスタッフの皆様にもよろしくお伝えくださいませ。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

東京大学高齢社会総合研究機構
瀬沼 智洋