[2010.09.23 見学] 中川路 愛弓 氏 感想文

ナカノ在宅医療クリニック研修レポート

 今回鹿児島市立病院初期臨床研修プログラムの地域医療の枠で、ナカノ在宅医療クリニックで研修をさせていただく機会を得ることができました。
 朝のカンファレンスでは内容の濃いディスカッションがなされており、患者さんの状態はもちろん、患者さんをささえる家族の受容の状態までスタッフ全員で真剣に討論されていました。また、カンファの内容、往診の際の診療録など、院内メールを使用して全員で共有されていました。ナカノ在宅医療クリニックでは、心構えにおいても、システムの点からみても、在宅医療に関わる全ての人の連携がよくなされていると感じました。これこそがチーム医療なのだと初めて実感しました。
 往診に同行させていただくと、患者さん、家族のみなさんほとんどが笑顔で迎え入れてくださり、ターミナルの患者さんを支える家族のかたも不安は強くなさそうに感じました。私が思ったことは、「もし、この患者さんが病院に入院していて、私が主治医だったら、不安要素がいくつもあるのに、どうしてこの患者さんや家族は、こんなに安心した気持でいられるのだろうか?」ということです。「中野先生を信頼されているからなのかな」と往診中は単純に思っていました。往診のあとに中野先生から「キュア」「ケア」理論についてわかりやすく事例を交えて講義していただき、私の中の「?」が見事に解消されました。ナカノ在宅医療クリニックの患者さん、家族の方が安心していられるのは、中野先生を信頼されているのに加えて、それぞれが「ケア」の考え方を理解し、実践しているからなのです。中野先生、スタッフのみなさんと、患者さん、家族の方との話し合いのなかで「ケア」の考え方がしっかりと育まれていっているのだと感じました。自分で「ケア」の理論を理解するだけでなく、それを患者さん、家族にうまく伝えていくことも大事なことだと思いました。
 「キュア」と「ケア」についての講義の中で、人の横顔と壺に見えるトリックアートが出てきました。同時に二つの絵を見ることは難しいですが、人の横顔が最初に見えても、他の見方があると知っていれば容易に壺はみえてきます。私は今まで、「キュア」の常識の中で生きてきましたが、今回の研修で「ケア」の見方を知りました。医師となって2年目の今この時期に、今回の研修で感じ、学んだことは、今後医師として医療に携わる自分にとって、大きな影響を与えることとなりそうです。
 中野先生をはじめ、スタッフのみなさん、お忙しい中、研修を受け入れていただきありがとうございました。