[2009.10.09 見学] 鈴木 詩織 氏 感想文

中野在宅クリニックを訪問して

緊急往診を含めて一日20件の利用者宅への訪問診療を見学させて頂きました。3090代の慢性期、ターミナル期、急性回復期という多岐に渡る病体期上の在宅医療利用者の方々を訪問して、皆様、自己の病気や症状と真に向き合っている様子を見て取ることができました。誰一人として受け身的な利用者がおらず、利用者の治療方針は利用者自身、あるいはその家族が決める。利用者、家族は中野先生を始め、医療者と対等に話し、意見を交換しているは驚きであり、理想的でした。

「障害は個性である」という言葉はよく聞きますが、ここでは、「年齢も、病気も個性である」ということが実感できたように思います。利用者の方が病気持っても、医者に治してもらうという意識ではなく、自分達で向き合い、今、そしてこれからを自分達で考えていらっしゃる様子を見て、個々人の生活の場に在宅医療が入りこんでいることが伺え、また、医療者も利用者の自己治癒力を高めるように関わっており、医療者のハイレベルな意識を伺い知れました。

時間を惜しまず、利用者やその家族と関わり、手を取り、肌を合わせる様子は、自分のあるべき医療者としての立ち振る舞いを習いました。「時間は作るもの」という言葉通り、中野先生は、IT技術を駆使して、膨大な量の利用者情報をパソコンに集約し、なおかつ最新データや情報は瞬時に電子メールを介して受け取る。さらに、緊急や至急の質問等には携帯電話にて応答する。緊急対応の救急車輸送や、病院への連絡と情報共通の現場まで立ち会い、ITの駆使を体感できました。このIT技術の利用方法は、在宅専門医ならではだと思います。病院や診療所を構えず、診療の場を在宅とするということは、情報収集手段こそIT技術に頼る、しかし、利用者との関係はあくまで直接対面、つまり、「顔を合わせることにこだわる。」IT技術の医療進出はこのようにあるべきであると感じます。

  フットワークの軽さ

  即時の対応

  IT技術による情報収集・伝達の簡便化

これらが地域に根ざす在宅医療の姿であると思います。

一日の訪問同行で、中野先生が携帯電話を受けたり、かけたりした回数は20回以上でした。スタッフからの緊急電話や指示を仰ぐための電話だけでなく、利用者からの電話もあり、先生自ら居宅施設に電話して入居を依頼されており、用事はその場で済ます。その姿勢が伺え、時間の効果的利用だけでなく、このような関わりが人と人との信頼関係を強め、深めているのだと理解しました。

訪問中の先生のお仕事ぶりを支えるのは、他の医療スタッフだけでなく、事務の方による情報伝達のパイプ的役割によっていることもわかり、中野クリニックによる在宅医療は多くの関係者によって成立しているご様子でした。医療・介護は医療・介護スタッフ、在宅療養者と家族だけなく、事務や訪問車の運転手等の直接、現場に関わらない人々にまで至り、実行されていると実感できました。

 今回の中野在宅医療クリニックを見学して、人との結びつきが在宅には大きく反映することを学び、人間性を磨きたいと思いました。中野先生をはじめ、クリニックや訪問看護ステーションの皆様、みんな素敵でした。目から鱗の現状を体感できて大変光栄です。早々に褥創のラップ療法は実践したいと思います。中野クリニックでの体験を活かして今後も励みたいと思います。ありがとうございました。