[2009.10.26-27 見学] 松本 純 氏 感想文

この度は、102627日の二日間、研修させて頂きありがとうございました。わずか二日間ではありましたが、とても濃厚で病院では得がたい経験をさせて頂きました。

 中野先生が政権交代に例え、キュアからケアへ、入院管理から在宅管理への転換等の、お話をして頂きましたが、病院での診療が当たり前になっていた私には、それを理解するにはかなりの意識改革が必要なようです。特に外科、キュアを目指している私にとっては。

まず、第一の衝撃は診察に行く以前に訪れました。白衣を着ずに診療を行なうことに、妙な違和感と不安を抱いた。これは私にとって思わぬことでした。白衣を着ることで初めて医師になれる、まさに「虎の威を借る狐」のようでした。また、「検査・治療を受けないという選択」「死ぬことは決して悪いことではない」という先生の言葉は共感を持つと同時に、今までやってきたこと(極短期間ではありますが)に疑問を投げかけるものでした。しかし、実際の在宅医療の現場を見ることで先生が実行されている医療が、現在そしてこれから必要なものであることを実感できました。

また、今まで抱いていた疑問の一つが解けたように思います。「なぜ、ターミナルの患者を救急車で救命センターに搬送してくるのか?」いまの医療は自宅で最期を看取る体制がほとんどできていないことがわかりました。学生の時、奄美・与論で訪問診療を見学したことがあり、ほとんど病院がない地域では絶対に必要な医療だと思ったのを憶えています。では、五分も車に乗れば病院に行き当たる街で訪問診療は必要なのだろうか?正直そう思っていました。しかし、自宅で死にたいという思いは島であれ、街であれ変わりないのだと気付かされました。それを支える医療がないことに、死と向き合い初めて知るのは、あまりに残酷ではないか。

今回の研修で、患者が望む医療、社会が望む医療、医師が望む医療の違いを垣間見れたように思います。今まで考えていなかったこと、むしろ眼を背けていたものが在宅医療の中にありました。私はこれからおそらく主にキュアを実践する医師になると思います。その中でこの経験を生かしていければ良いと思います。

最後に、ご多忙の中、親切丁寧に対応していただいた中野先生やクリニックスタッフに心より感謝申し上げます。

鹿児島市立病院研修医

松本 純