2008.10.30  見学】 前田 泉 氏  感想文 

ナカノ在宅医療クリニックでの研修報告(平成201029-30日)

スナッジ・ラボ株式会社 前田泉

30日朝のカンファレンスに参加後、16軒の訪問に同行させていただきました。
前日に中野先生にお話いただいたキーワード「生活を支えるケア」「多職種連携」が、ストンと入ってきました。
お宅に上がらせてもらうと、当たり前ですが、患者さんの生活がそのまま目に飛び込んできました。生活の場、生活スタイル、ご家族、経済状態などなど。診察室ではなかなか得られない情報です。「キュア」から「ケア」という転回は、患者さんのお宅へ訪問することでごく自然に起こってくるのではないかと感じました。
また、患者さんやご家族を36524時間支えることは、点ではなく線で支えることであり、訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師などが面としてかかわる多職種連携も必然であることを、ご夫婦のどちらも介護を必要としているお宅に伺ったときにヘルパーの方と意見交換しているのを見て感じました。お宅にある連絡ノートで連携情報が共有されていましたが、ナカノ在宅医療クリニックで使っている電子カルテが、将来的にノートに置き換わるようになれば、もっと地域の医療資源の有効活用が促進されると思いました。

独居のがんの末期の高齢の患者さんが、穏やかに過ごされているのをみて、中野先生いわく、「在宅でなかったら、もうなくなっている患者さんだった」のが、独居なのになぜだろうかと不思議でした。考えてみれば、入院では、「ベット」にしか自分の空間がなく、しかも病院での管理システム下に置かれることで、時間の過ごしかた、食べ物、動くなどいろいろな制限があり、患者さんがもっているエネルギー、気持ちが閉じ込められやすいのではないか。一方、自宅では、自分の生活の場あり、動こう、食べよう、話そうということがでやすい。もちろん、入院管理の必要性を否定するものではありませんし、いろいろな病状、状態の患者さんがおり、一律なことはいえないと思いますが、在宅には、患者さんのそういうものを引き出す力があるのではないかと感じました。

16軒を回って2時過ぎにはクリニックにもどり普段はこれでおわりだよと聞いたときに、びっくりしました。情報入力はその場で行い、カルテ入力や書類作成は、後方の事務スタッフの方が行うITを活用した業務システムの効率化の威力を目のあたりにしました。
在宅医療という社会システムをつくることも、「先端的イノベーション」であることを肌で感じる経験となりました。
ナカノ在宅医療クリニック、訪問看護ステーションの皆様、2日間ありがとうございました。これをご縁に今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

番外偏

29日の夜は、中野先生の行き着けの居酒屋「磯香」に連れて行ってもらい、ご馳走になりました。イカの生き造り、茹でカニ(上海では上海蟹と呼ぶカニで地元の名前は忘れました)、すりつぶした肝とポン酢でいただくカワハギのお刺身、最後はアンコウ鍋とどれも顔が崩れっぱなしのおいしさでした。カニを食べているときは、座卓に静寂が広がっていました。

そこのご主人の前平さんが「どんな仕事でも好きになって、とことんやるんだよ」と確信にみちた穏やかな表情でお話されたことも、強く心に刻まれました。心身両面ぽかぽかの夜となりました。