2008.03.21 見学】 後藤 慶次 氏 感想文

中野先生はじめ、ナカノ在宅医療クリニックの皆様方、大変お世話になりました。先生がクリニックを立ち上げられて間もないころ、私は熊本市の内科クリニックで在宅医療を担当していました。現在はホスピスの担当医をしながらがん末期患者のみ訪問診療をしていますが、情報共有にITを活用されているとの先生の論文を拝見し、是非見学したいと連絡しましたところ、快くお引き受けくださり、一日研修させていただくことになりました。

朝のカンファレンスで、訪問看護師さんの患者・家族に関する情報収集が適確で細かなところまで配慮されており、診察時に施行する処置や家族への説明などの計画が事前にきちんとできていることに驚きました。カンファレンスの後、いよいよ訪問診療です。

電子カルテのダイナミクスとメールを使い、訪問記録やレセプトの合理化をはかっておられることは聞いていましたが、パソコン片手に訪問診療とは、果たしてどんな風になさるのだろう?と興味津々でした。患者さん宅に訪問し、まずご挨拶、患者さんの診察を済ませたあとは、パソコンを開き患者さん、ご家族とお話しながら看護師さんがチェックするバイタルサインや診察結果をメール原稿に入力します。電子カルテダイナミクスの検査データなどを参照しながら必要に応じて採血なども行います。患者家族の前でパソコン画面を眺めながらというのは、患者・家族にとって抵抗があるのではないかとも思いましたが、入力作業にかける時間はわずかで、患者さん・家族ともずっと笑顔で会話も弾み、確固たる信頼関係を築いてらっしゃるのがわかりました。誕生日を迎えた患者さんには花束を贈り記念撮影、これを編集してお渡ししているとのこと(フォトセラピー)、本人のみならずご家族にとってもいい記念になることでしょう。温かい配慮に感動しました。

がん終末期の患者さん宅にも訪問いたしました。急に始まった在宅療養でまだ期間が短く、ご家族の気持ちの準備ができていないとの指摘が朝のカンファレンスであり、訪問時にご家族とその点についてのお話がなされました。麻薬処方は適確で痛みが軽減し、患者さんは楽になっておられる様子でした。私がホスピスの担当医であるからかもしれませんが、このときの説明にはもう少し時間をかけたほうが良いような気がしました。

 中野先生の在宅医療を拝見して、事前にきちんと計画された予防医学である、と実感しました。訪問看護師さん方がとても優秀で、患者・家族に寄り添い、ニーズを適確に捉えており、その情報を元に訪問診療が計画され、必要な治療や検査、他院への紹介などが行われていました。もともとは効率の悪い在宅医療をいかに効率良く、在宅療養支援診療所の要件である24時間体制を精神的、肉体的な負担を軽くしながら行っていくか。訪問看護師の育成と情報共有にかかる時間短縮のためのIT化がひとつのポイントになると思いました。月に数回程度しか夜間の出動はない、といわれたのも事前の説明や約束処方などにより、不安を感じさせない準備が行われているのだなと想像しました。

ナカノクリニックもはじめから今のような体制だった訳ではなく、患者数や中野先生のIT化の進歩に合わせて今のシステムになったようですし、おそらくこれからも進化していかれることと思います。また、数年後進化したナカノクリニックを見学に伺いたいと思います。また、中野先生の地域医療にかける情熱に触れ、私もこの熊本の地で地域ネットワークの構築のために努力していく所存です。このたびは本当にありがとうございました。