2008.03.04-07 見学】 田頭 秀悟 氏 感想文


2008/3/10

ナカノ在宅医療クリニック見学感想記   

南かごしま日高病院 ハイブリッド後期研修医

田頭 秀悟

 200834-7日の4日間、中野先生に御願いしてナカノ在宅医療クリニックの診療見学をさせていただきました。
 お忙しい中、中野先生にはいろいろな事を教えて頂き大変感謝しております。今日はその感想を記したいと思います。


 在宅医療はこれから必須の医療であるということを痛感した4日間でした。
私は常日頃から「予防」というものに興味を持っています。病院で病気になった人を診ることは確かに重要ですが、それだけでは十分ではなく病気になる前の人に対してこまめな健康教育や予防活動を行っていくことで、時間はかかるかもしれないけれど、今の現状が改善することが十分期待されることを信じています。


 「生活とともにある医療」、その意味で在宅医療はその一翼を担うわけですが、実は私が認識していたよりもずっと大きな役割の可能性を秘めていることに気がつかされます。


 がんの末期の患者さんが病院でなすべきことを終え在宅で余生を過ごすという選択、そういう当たり前の選択が今までどれだけ見過ごされてきたことでしょう。
 中野先生と訪問させて頂いた家々の皆さんは基本的に皆いい笑顔をしていた。もちろん病状が苦しく、そうも言っていられない状況の方もおられましたが、長い時間軸の中ではそれも一時の苦痛、人生そのものであるようにも感じられました。


 人間はやはり自然の中の生き物なのでしょう。
 不自然な環境におかれると体調を崩すというごく当たり前の現象は、病院で点滴につながれ栄養は口ではなく血管から入るという不自然な投与経路にも当てはまるのでしょう。点滴漬けになった患者さんが在宅になって経口栄養剤を再開して元気になったという症例を何例も見せていただき、私は驚きを隠せませんでした。


 中野先生と一緒に訪問診療に回って印象的だったフレーズは多々ありました。「最期くらいは家でゆっくりしましょう。もしかしたら今が大事な時間になるかもしれませんよ」「治さないといけないと思うから辛くなります。がんも広く考えれば老化の一種です。」「自宅でも病院と同じようなケアを受けることができます」など他多数ございました。


 そう、治療ではなくケアなのだと感じました。
 今まで、いや今も行われているのはケアをすべき対象に治療を強いている事ではないかと、感じたわけです。


 在宅での医療がいかに価値があることか、聞かされるのでなく実際に目にすることで本当の意味で実感できたように思います。この4月から大学の医学生さんが中野先生のところに実習にいらっしゃるそうですが、とても良い試みだと思います。


 医療者の認識が足りないこともさることながら、一般人でも終末期は病院でと考える人は非常に多いと思います。
 実際みたら「ここまで手厚いケアが在宅で受けることができるのか。それならばもっと早くに頼んでおけばよかった」という人が多い事実がこのことを裏付けます。そういう意味で医者になる前に在宅医療の現場を知るということはとても価値があることです。


 また同様の理由でこの間観た映画「終わりよければすべてよし」は一般の方にも医療関係者にも入りやすいツールなので優れていると感じました。


 他にも感じたことは数知れず、暗黙知を表現することの困難さをかみ締めていますが、とにかく非常に有意義な4日間が過ごせたことに中野さんには感謝してもし尽くせません。
 今後の医者人生においてこの4日間は財産です。この経験を大事にして私も今後在宅医療に関わっていく所存です。中野先生、またナカノ在宅クリニックのスタッフの皆様、大変有難うございました。


 駄文、長文で大変失礼致しました。