ナカノ在宅医療 診療訪問同行 感想文

イーエヌ大塚製薬梶@製品学術部 

上野あさひ

・百聞は一見にしかず。

・リアルタイムの連携業務。

・院内にはない柔軟性と行動力。

・そして、患者さん、介護している方の笑顔。

これが、今回の訪問診療同行で、特に印象に残ったことです。


私が所属している会社は、経腸栄養剤の製造・販売を行っています。経腸栄養剤は院内、在宅、また診療科を問わず、たくさんの患者さんがお使いになる製剤ですが、今まではどちらかというと、院内・急性期向けに、製剤の情報提供を多く行ってきました。医薬品メーカーに勤めて3年、これから大きな市場を占める「在宅医療」について勉強したい!と思っていた矢先に中野先生と知り合う機会にめぐり会い、あれよあれよという間に訪問診療に同行させていただくことになりました。

  同行させていただいた15件中、経腸栄養剤を使っている方は56名。意外と少ない、と思ったのが正直なところです。輸液処方もなく、皆さん元気に口から食べていらっしゃるのにも驚きました。診療・処置内容も至ってシンプルで、体温などのバイタルチェックと、カニューレ交換の方が1名いらっしゃったのみでした。カニューレ交換時には消毒をほとんど行わず、あっという間の交換だったこと、介護者の奥さんの手際の良さがまるで看護師さんのようで、奥さんがすごく頼もしく見えたのが印象に残っています。

訪問させていただいた中で、別のDr.が同じ患家に訪問診療を行っているケースがありました。その患者さんにはたくさんの薬が処方されており、別Dr.とナカノ在宅からの処方薬の内容が重複する可能性がありました。すると問題が挙がった直後にその別Dr.に電話をかけて、あっという間に処方薬の調整がついてしまいました。患者さんが薬嫌いで、ちゃんと飲んでくれないという相談に対して、ならば、なるべく必要性の高い薬だけでも飲んでもらえるようにと、必要性の低い薬を、ばっさばっさと切っていく中野先生と森さん・・・不適切かもしれませんが、素敵でした。

 Dr.と看護師、事務の役割の明確化、また不明確なもの、何か問題と思ったことはミーティングその他で随時明確にしていくことで、その後の作業の効率化が図られている。後回しにせず、携帯電話とパソコンを駆使して、リアルタイムの情報交換を行うことで、ナカノ在宅医療チーム内はもちろん、外部の施設との連携をもうまく行っている様子を、間近で拝見させていただくことができました。

あとは運転手さんの存在にもびっくりしました。これも作業の効率化の一環なのだろうなあと勝手に納得しておりましたが、路面駐車に対する対策、という意味合いもあるのでしょうか?

私事ですが、今年の初めに祖母を亡くしました。大腸がんで、病変が見つかったときにはもうかなり進行しており、最後は薬でほとんど意識がないまま、病院で息を引き取りました。病気が見つかってから亡くなるまでの約1年、基本は入院で、体調が良くなった時だけ自宅に「宿泊」するような生活を繰り返していました。実家は田舎ですが、訪問ヘルパーさんを頼むシステムがあり、家に戻ってきた時には来てもらえるよう、お願いしていました。が、往診をしてくれる在宅医療施設はありませんでした。


中野先生と森さんの後ろにくっついて行って、訪問先のお家にあげていただくまで、自宅にいきなり知らない人(つまり私のことですが)が来て、自分のこと、または自分の家族をじろじろ見られて嫌な顔をされないだろうか、怒られたり拒否されたりしないだろうか、と不安を持っていましたが、見事に裏切られました。皆さん気持ちよく(もしくはあまり気にせず)、「どうぞどうぞ〜」と言いながら家に入れて下さいました。診療がはじまっても、患者さんも介護者の方も、院内診療のときのような緊張感が全くなく、笑顔が見られたことが、今回いちばん印象に残っています。うまく説明できないのですが、今までは、家族に迷惑をかけてまで家に固執するのはどうなのだろう?という想いを少なからず持っていた私が、やっぱり、死ぬときは家で死にたいし、自分の近しい人にもそうしてもらいたい、と思えました。ナカノ在宅医療のようなチームが私の実家の近くにもあったら、祖母も家で死ぬことができただろうかと、今更どうしようもないのですが考えてしまいました。

病院医療にはない柔軟性と、ずば抜けた行動力を持ったナカノ会の「在宅医療」。これから益々増えてゆく在宅医療のパイオニアとして、これから益々飛躍していくのだろうと想像せずにはいられません。でもそのときにも、私のような「知りたい」と思っている者に、ちょくちょくと、分からないことを教えて下さるような、開かれたナカノ会であり続けて欲しいです。

本当にありがとうございました。

2006年10月22日

上野あさひ