ナカノ在宅医療クリニック同行感想】

EN大塚製薬株式会社 企画部(在宅・情報担当) 稲葉 亜希子


20061016日(月)、とても良い天気の日に、訪問診療に同行させて頂きました。訪問診療に同行させて頂くのは今回が2回目でした。ナカノ会のITを駆使した訪問診療を見せて頂けるとあって、とても楽しみにしておりました。訪問件数は午前中6軒、午後1軒。多くの方は慢性期で、安定している方がほとんどでした。

同行させて頂いたのは、鶴薗由希子先生と永澤明恵さんです。訪問診療に同行させて頂き、驚いたことは、11人の患者さんあるいはご家族の方に、残薬の量を確認して処方をしていることでした。普段、病院に通院して処方して頂いた薬が飲まずに余った場合、次の処方の際に残薬の量を確認してくれたり、処方量を調整してくれたり、という経験は今までないからです。仕事上ではラコールを処方されていても、飲めずに余って家に箱ごと家に積んであるというお話も聞いたことがありました。ごくまれに、使用期限を1年以上過ぎたラコールを飲んでしまったが、大丈夫か、といったお問い合わせも受けることもあります。残薬をお一人お一人確認していて、手間ではあるけれども、使用期限切れのものを飲んでしまうといったトラブル回避からも良いことだと思いました。必要があって先生が処方をしてくださった薬剤を本当は全部飲むことが望ましいのだと思うのですが、患者さんご自身で調節されていますし、また自分が患者であった場合にも、途中で治ったから、と自己判断をして薬を飲むことをやめてしまいます。鶴薗先生の「どうしても飲んで欲しい薬剤はきちんと必要性を説明しているけれど、それでも自己判断で飲まない方もおられて、説明は聞いたうえで自己責任において飲まないというのは、そこも含めて在宅医療なんだ」というお話を聞いて納得できました。

在宅医療を見せて頂いていつも思うことは、看護師さんの「すごさ」です。患者として病院に行くときに見る看護師さんは、採血をしたり、診療の補助をしたり、という場面ですが、在宅医療の看護師さんは患者さんの状態を見て判断をしたり、処置をしたり、医師と見紛うほどです。永澤さんも処置はほとんどありませんでしたが、バイタルを取り、薬の指導をしていました。医師とは役割分担なのかな、と思いました。医師は処方をしたり、患者さんの状態を把握したり、医学的な詳細な情報が頭の中に入っており、看護師さんは患者さんの生活環境や希望、要望、家族関係など生活に関わる情報と医学的な情報が頭の中に入っているようでした。医師と看護師の連携で、あらゆる情報が網羅され、円滑に在宅医療が進んでいくような気がしました。

今日訪問した患者さんはほとんどどの方も慢性期で安定していて、認知症があっても軽度の方ばかりでしたので、どの患者さんも自分の意思をはっきりと述べられていて、先生にもして欲しいことをはっきりと伝えていて、在宅医療の主役は患者本人ということがよくわかりました。また、患者さんの話に傾聴する姿もまた病院とは違っていて、患者さんは必ずしも起き上がるわけでもなく、横たわったまま、先生に手をさすられながら、思う存分話しを聞いてもらえる在宅医療を受けられるということは幸せだと思いました。鶴薗先生のお話で、手をさすることは治療である、とおっしゃられていて、確かにそうであるだろうし、患者さんはとても安心するだろうと思いました。つらいときに、つらいと言える、不安なときに不安と言える、患者さんはどれだけ安心するだろうと思うと、何よりも一番患者さんがしてほしいことなのではないか、と思いました。

1人の患者さんに対して、移動中の車の中も鶴薗先生と永澤さんは対応や状況を議論していて、在宅に先生や看護師さんがいるときだけではなくて、いつもどこでも患者さんのことを考えていてくれているのだ、ということを目の当たりにして、とても心強く思いました。また、ITを駆使することで、移動中にも患者さん全員のカルテをすぐに見ることができ、変化があった患者さんの情報はメールで随時配信されていて、職員の方全員で情報が共有できることは効率的だと思いました。在宅療養支援診療所の要件には、24時間、365日の対応があります。誰がいつ、どの患者さんを訪問するかわからないということですから、情報の共有化は難題だと思います。ITは一般的に情報が流出すると、またたく間に広がってしまうという欠点も指摘されますが、デメリットよりもメリットの方が大きく感じられ、今後の在宅医療には必須のものとなっていくだろうと感じました。

医療事務は神崎さんにご説明をしていただきました。IT化することで、カルテから自動的にレセプトに情報が反映され、効率的だと感じました。診療報酬の引き下げが続く中、医療法人の経営も大変なことと思いますが、算定できるものは確実に算定する、算定漏れがないようにしていくためにも、ITは役立っているように思えました。

24時間、365日対応をしてくれる在宅療養支援診療所は、在宅療養をする患者さんにとっては本当に心強いと思います。在宅療養支援診療所の制度を次の診療報酬改定でなくさないために、厚生労働省に作って良い成果が出た、と判断して頂けるように、私たち製薬メーカーも何ができるのかを考えて行動していかなければならないと思いました。患者さまのベストパートナーでいられるよう、製品開発、情報提供等々で貢献できたら良いと思いました。中野先生、鶴薗先生、永澤さん、神崎さんをはじめ、ナカノ会の皆様、大変お世話になり、どうもありがとうございました。今後ともご指導くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。