2006.08.08見学】 原田 亜矢 氏 研修報告

 中野在宅医療クリニック実習を終えて

                      鹿児島大学4年 原田亜矢

今回中野在宅医療クリニックにて一日自習をさせて頂きました。朝、予想以上に混雑する3号線を抜けてグングン登って下った所にそのクリニックはありました。てっきり「病院」の風貌をイメージしていたら、非常にかわいらしいかつ大きい家がそこにはありました。一角に事務所を構え、あとはスタッフの方と数台の車があるだけです。診療室も病室もありません。家にお邪魔してみると、皆さん一人一台ずつパソコンを持ち、カチャカチャやってはスタッフ同士で情報を受け渡ししていて、さながらIT企業のようでした。そうこうするうちに朝のミーティングが始まりました。申し送りから今日のコースの確認をし、運転手さんのお昼ご飯についてといった開業ならではの経費問題まで耳にすることができました。

ミーティングを終えると早速訪問開始です。車には中野先生・看護士さん・運転手さんが乗り込んでいつも巡回していくようです。今日は私が割り込むため、道具・荷物の置き場に迷惑をかけましたが、さぁ出発です。この日は数少ない小児の患者さんのもとを訪れる機会がありました。でもほとんどの利用者がお年寄りで、お年寄りによるお年寄りの介護でした。よく介護において問題にされる点ですが、中には息子さんが下垂体不全によりそのご両親が介護をずっとしているという家庭もありました。ご両親もだいぶ高齢で、果たしてその息子さんのこの先はどうなるのだろうともっと気になりました。

今回この実習を希望したきっかけは、概説で老年医療・在宅医療を受けたからです。私の身内にはいわゆる介護を必要としている者がいないので、初めて「介護」について時間を費やしたのですが、受けたイメージは正直「しんどい・・・けど頑張る!!」と力んだものでした。しかし今日の実習で一変されてしまいました。いくつかの家を回ってのことだったのですが、強いて一家庭挙げるとするとそれは老夫婦でした。96歳の旦那さんは危篤状態に陥り、最後は畳の上でということで施設から帰ってきました。しかし1週間後には水戸黄門を見ながら「おう先生来たか」と私たちを迎え入れるこの回復力。診察をする中で、奥さんが「帰ってこんでも良かったのによ〜」と話し、私は修羅場??と焦って返答に困っていたら、中野先生が「次はいつけ?前もって言っちょってくいやい」キャハハハと3人で楽しんでいるじゃないですか。ありのままの状況を受け入れて無理をしない、このポリシーが介護を長続きするものにし、利用者が望む最後を確実に迎えられるのだろうと思いました。病院ではcureを目標としますが、介護では目指す所はcareです。この概念を医療側だけでなく、利用者側も理解しているからこそ、この信頼関係が成り立っているのだろうと思います。

最後に中野在宅医療クリニックのITについて述べねばならないと思います。あれだけ事務所を小さく納めて外へ出て、車でピョンピョン飛び回ることを可能にしているのがそれです。そのため一般的な病院のスタイルより、スタッフ同士が過ごす時間は減ってしまいますが、メーリスを利用してタイムラグ無く情報を共有することで見事な連携が取れています。IT化の成功例と言っても過言ではないと思います。パソコン類に弱い自分が言うのも何なんですが…

今回は本当に有意義な実習をありがとうございました。どちらかと言うと、自分の考え方や概念に大きく影響を受けました。また機会あらばよろしくお願いします。