2006.08.07見学】 堀田 和子氏 研修報告

ナカノ在宅医療クリニックを見学して

 鹿児島一次医療系の講義で中野先生のお話を聞き、在宅医療という新しい医療の形態を知りました。講義を聞くだけでも、在宅医療という分野はとても新鮮で、患者さんによりよいサービスを提供していくための新しいシステムなのではないか、と感じました。そこで、臨床系の講義が終わったこの夏休みを利用してぜひ、現場を見せていただきたいと思い中野先生にお願いをいたしました。中野先生は快く引き受けてくださり、スタッフの方々や患者様も、温かく受け入れてくださりとても感謝しております。

 訪問診療に同行して驚いたことは、先生方や看護師の方と、一人ひとりの患者様とが、また、ご家族の方や介護をされる方との距離がとても近いということでした。患者様とはもちろん、周囲の方ともしっかりと情報交換をできる信頼関係がそこにあるように思いました。中野先生は「いざというときに備えて日々の患者様の様子をしっかりと把握しておく」とおっしゃっていました。不測の事態ではなくとも平常より、患者様の状態を知っておくということは、患者様の病気をみるのではなく人間をみるのだ、ということの実践でもあると感じました。スタッフの方はどなたも患者様のことを本当によくご存知でした。院内ではメールで診療の情報をやりとりし、カルテも共有の電子カルテだとお聞きしましたがこのような情報システムの活用があってこそ、多くの患者様にきめ細やかなケアができるのだとおもいます。

 また「病院」というところは「病を治すところ」であり、人間が生活をしていく場所ではありません。従って病院では状態の悪くなったときだけ患者様を日常から切り離した状態でみているのだということを改めて認識をいたしました。病を治す場所は必要ですが、病気と付き合っていかねばならない患者様には可能であれば在宅医療という選択肢もあるのだとおもいました。実際に家庭に戻られて、病院にいたときよりも検査値が安定して調子がよくなったとおっしゃる患者様もいらして、人間の生活の場所は自分の住むところであり、家族とともに暮らせる場所なのだと、当たり前のことをしみじみと考えました。

 一方で先生方はいかに患者様のQOLを高めるのかということにも苦心をされていて、そのために非常に研究熱心に新しい試みなどもされているご様子でした。そのような一つ一つの細かい気配りができるのは大病院とは違った在宅医療の魅力であるということも感じました。

 もっともよい経験をできたと感じた点は「お悔やみ訪問」に同行させていただいたことでした。ターミナルケアなどにおいては、患者様だけではなく、周囲の方も含めてサポートしていかなければならないとおもいます。在宅という「場所」へ、医療が介入していく上では患者様の周囲の方も含めてのチーム医療だとおもいます。人間関係を大切に仕事をされているスタッフの皆様の姿勢を感じました。

 医学部に入学する際の面接で私は「人がよりよく生きるお手伝いができる医師になりたい」と、こたえました。当時はまったく医療の世界などわからずに言った言葉ですが、そのときの理想の実現が在宅医療という場所にはあるのかもしれないと感じました。来年は五年生になり、ベッドサイドでの実習が始まります。今回の見学で受けた刺激を忘れずに患者様のためによい医師になれるように励んでいきたいと思います。

本当にありがとうございました。