2006.03.26見学】 川畑 力丸氏 感想文

 今回在宅の往診の見学をしながら、以前自分が田舎の整形外科だったころを思い出しました。一人暮らしの老人が骨折をして、手術を行い、大体リハビリも順調に行き、そろそろ退院をしましょうと都市部に住んでいる家族に話すと、多くの家族が、もっと入院したままでいてほしいと希望し、結局病院は退院するものの老健や、老人ホームに移って行きました。

在宅で看護、介護をするということは沢山のエネルギー(主にマンパワー)を必要とすることだと思います。公的な支援も有るとは思うものの、家族の費やす労力には頭が下がります。

健康で働き盛りではない人に対する(行政を含めた)対応はソフト的にも、ハード的にもまだまだで、提供する側も、受ける側も模索段階のように思われます。

今後急速に高齢化していく中で否でも在宅という選択肢は増えつづけて行くことと思われますが、今のうちにいかにサービスを提供するかだけではなく、自分がサービスを受けるときにはどうすれば良いかをもっと知っておく必要が有ると感じました。

 往診の見学に行った中で、最初に感じたのは個人のプライバシーを含めて全てを受け入れる覚悟が必要だと思いました。来ていただける患者さんと違い、往診に行けば音、におい、ペットに至るまで患者さんの好みであり、自分のスタイルで診療をするという事は実は贅沢なのだと思いました。逆に診療では明らかにされない部分の発見もありうるだろうと思いました。

 今回往診に同行させて頂いて、拝見させていただいた患者さんの中で、幻覚が出ている?老婦人が居られましたが、普通外来であれば精神科を紹介して、終わり。ということになりそうですが、時間をかけて近所の(日頃支援をしてくれている)方を呼んで一緒に本人と話し合いをするところは、在宅の一番得意にするところなのかと思いました。また、普通の個人宅を改造したようなショートステイ用のハウスが普通の住宅街の真中に有る等、今まで知らない世界を垣間見させてもらいました。

 結局在宅を選択するということは、患者さんを支えられる熱意のある家族がいて、家族と患者さんの双方をサポートできる医療体制が有って、尚且つ行政のサービスというサポートを適切に利用出来ることが必要だと思いました。

 大家族がひとつの家にいて、それぞれが少しずつ助け合って生きてきた戦前型の日本の「家」制度が壊れ、核家族が、「隣は何をする人ぞ」という生活スタイルになった今。在宅、訪問看護、行政共にますますマンパワーとお金とエネルギーが必要になりそうな気がします。

 行政のサービスなどを余り省みずに今まで診療して来ましたが、少しサービスの利用方法などを勉強しながら、希望をされる方に在宅という選択肢を提供できるようにしたいと思いました。

 最後に当日見学を許可していただいた患者さんとご家族の方、及びこのような機会を頂いた中野先生とスタッフの皆様に感謝致します。