2005.07.29見学】 白木 良治氏 研修報告

 私はこの10月に鹿児島大学医学部へ学士編入学することになりました白木と申します。受験の際には中野先生に大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます。

 中野先生と知り合ったのは私が受験に際して鹿児島県の医療の実情を教えてほしいと先生にメールを送ったことがきっかけでした。中野先生は見ず知らずの私に対して忙しい合間を縫って丁寧に返事を書いてくださり、更に有り難いことに私に訪問診療へ同行してはどうかと提案してくださいました。在宅医療に興味があった私は願ってもないお話でしたので、ナカノ在宅医療クリニックで朝のミーティングから丸一日体験実習をさせていただきました。今回はその際に感じたことを率直に述べさせていただきたいと思います。

 私が参加した日の1日の流れを説明しますと、朝8時30分から医療スタッフの皆さんのミーティングに同席させていただき、その後中野先生の訪問診療に同行させていただきました。昼食をはさんで20軒弱のご家庭を訪問し、午後4時過ぎに診察が終了するという流れでした。訪問診療が終わった後も急患を提携病院に紹介したり、緊急の外来患者を診察するなど、中野先生の慌しい仕事ぶりを目の当たりにしました。当然のことながら私にできることなど何もなく、ただ皆さんの日常業務を邪魔しないようにすることで必死でした。

 今回訪問診療に同行して感銘を受けたことが3点あります。1点目はIT化です。これまで医療と全く畑違いの分野にいた私の頭の中では、訪問診療というと聴診器や分厚いカルテ、点滴、薬剤などが入った大きくて重い鞄を持った医師が家々を訪問するというイメージしかありませんでした。しかし実際に中野先生が持っていたのはノートパソコン1台と聴診器だけ。さらに驚いたのは、患者さんへの挨拶が済むと中野先生はその場に座り込み、看護師さんから血圧や脈拍のデータを聞きながらパソコンにむかってパチパチ入力を始めるという診察スタイルでした。「どっちが医者かわからないでしょ?」と中野先生は冗談を言っておられましたが、見方によっては確かにそう見えなくはないかなと思うような光景でした。しかしそのパソコンには何百人もの患者さんの医療情報がぎっしりと詰まった、いわば電子カルテが搭載されており、パチパチ入力していたのは過去の患者さんの医療情報を更新していたのでした。

 2点目は患者中心の医療を積極的に実践している点です。病院の3分間診療とは異なり中野先生は1人ひとりの患者さんを十分時間をかけて診察していました。その結果、適切な診断を行うことができると共に患者さんの病状や体質に合った薬を処方することができ、実際に患者さんに心から感謝されている場面を何度も見ました。さまざまなタイプの患者さんに対して常に誠実に接し時には身の上相談なども行い、患者さんの心の不安を取り除かれる姿勢には大変感銘を受けました。

 3点目はチーム医療を実践している点です。医師が中心となりその他の医療従事者がそれをサポートするという体制ではなくナカノ在宅医療クリニックでは複数のケアマネジャーと医師とが同等の立場でスクラムを組み、チームとして患者さんを診る体制を確立していることを知り、大変感銘を受けました。朝のミーティング時にケアマネジャーの方々が積極的に発言されている姿を見て、頼もしく思うとともに新しい時代の流れを感じました。

 今後、患者さんの死への考え方が多様化し、自宅で余生を送りたいと願う人も増えると思います。また医療費抑制の面においても在宅医療の需要は今後ますます高まることが予想されます。特に鹿児島県は坂が多く、高齢者が簡単に通院できる環境では必ずしもないため、在宅医療の必要性は全国的に見ても高い地域です。その意味においてナカノ在宅医療クリニックは時代のニーズや地域のニーズにマッチしたものであり、今後ますます発展していくと確信しています。私も将来少しでも人のお役に立てるよう寸暇を惜しんで勉学に励んでいきたいと思います。

注記 : 本文中のケアマネジャーは、訪問看護師(ケアマネジャー)です。)