平成23年度離島・地域医療実習感想
鹿児島大学医学部医学科6年
塩川 直宏

実習施設:医療法人ナカノ会 ナカノ在宅医療クリニック・ナカノ訪問看護ステーション
実習日時:平成23年6月21,22,23日

『初対面の方の御自宅に上がらせていただいたのは何年ぶりのことであっただろうか。』

このたび、ナカノ在宅医療クリニックとナカノ訪問看護ステーションで、訪問診療や往診、訪問看護の様子を見学させていただきました。今回の実習で、病院を中心とした「キュア」と在宅を中心とした「ケア」の違いと、それぞれの重要性を学びました。今まで医学部で学んできた私にとって、医療というものは「キュア」がほとんどで、医療が提供される場というのは病院や診療所のことでした。病院に入院している患者さんはもちろんのこと、外来で診療所に来られた方も不必要に緊張していたりすれば、非日常的な生活を送っていることになります。しかし、そこで業務を行っている医療従事者は日常的な生活を送っています。この違いが、医療従事者と患者さんの相互理解を妨げる障壁となっているのかもしれないな、ということを今回の実習で思いました。なぜなら、訪問診療や看護で訪れた方々は、住み慣れた我が家で、着慣れた服を身につけ、家族の作ってくれた食事を食べたりして、生活されていました。日常的な生活を送られていました。初めてお会いした方の御自宅に上がらせていただいたわけですが、今度は、私にとっての非日常でした。しかし、私個人の非日常は、未知との遭遇によるもので、中野先生やスタッフの方にとっては日常でした。そして、このことは、ナカノ会の方々が作りあげてきた、在宅での患者さんの「ケア」のために、様々な職種の方々とICTを利用して情報を共有して連携するといったシステムによるものであると思いました。 今回の実習では、実際の訪問に同行させていただいただけでなく、中野先生のレクチャーという形で、世の中の仕組みについて、いろいろと考えさせられる機会をいただいきました。医療を取り巻く政治や経済、ヒトやモノの流れというものをわかろうとしなければならないと思うようになりました。そういったことを理解していなければ、医療保険や介護保険といった行政の仕組みの中で、患者さんにとって不利益なく、十分な「ケア」を提供していくためのシステムは確立できないのだな、と思いました。 医療者主体の「キュア」が日常だった私が、今回の実習で、患者さん個人を主体とする「ケア」の現場を実際に体験することができたことは、これから医師として生きていくうえで、とても貴重な体験をさせて頂けたと思います。 最後になりましたが、中野一司先生、律子先生、松尾先生、看護師の皆様、スタッフの皆様、お忙しい中に丁寧な指導を頂きましたこと、深く御礼申し上げます。