この実習を行う前から、私自身の在宅で家族を看るという経験から「在宅医療」に対して、興味を持っていましたので、この実習は私にとって在宅医療を医療者の立場からみたり、これからの医療を考えたり、自身がこれからどういった医師を目指していくのかについて考える良い機会になりました。
訪問診療では私が考えていたよりも様々な年齢層、疾患、様々な在宅環境(家族の理解、介助の十分に得られている方から、家族の理解の不十分な方、家族のいない方まで)にいる方を診ているのだということに驚かされました。そして、実習前の認識は在宅医療=在宅でのホスピスとの認識でしたので、私が在宅医療について抱いていたイメージがかなり違っていたことに気づかされました。また、ターミナルの患者さんのところで、ヘルパーの「介護する上で特に気をつけなければならないことは何でしょうか?」との問いに、先生が「特に気をつけなければならないことはない。ここは病院ではなく、生活の場だから、治療をおこなう必要はない。あえていうなら、無理をさせないこと」と答えていたのが印象的でした。ここでも、病院の医療とは異なる在宅医療の一面を実感させられました。また、1日目に「看取り」に立ち会うという貴重な体験をさせていただいたのですが、その「看取り」というのはある程度は予想されていたものだったが、もうちょっと保つだろうと先生は予想されていたものでした。その瞬間に立ち会えたのは奥様のみで、残念ながら娘さんと息子さんは立ち会うことができませんでした。奥様は「びっくりしたが、これまでやれるだけのことはやったから。先生ありがとう。」と、娘さんも同様のことをおっしゃっていました。そこにスタッフと家族の間に培われていた信頼関係を感じ取ることができました。こういったことも在宅ならではのことのように感じました。さらに、初めてのことに驚かされたのは、IT化がかなり進んでいるということでした。1人1台パソコンを持ち、その場で、患者さんの情報をうちこみ、車に乗り移動の最中にも情報交換を行い、みんなが全ての患者さんの情報を共有できるようになっている。全てのスタッフで一人一人の患者さんをみていこうという姿勢が感じられましたし、それぞれの役割分担がきちんとなされているのを感じました。
2日目の訪問看護では、同行した看護師さんに「病院での看護師としての仕事と在宅での看護師の仕事と何が違いますか」と私が質問したところ、看護師さんは「その場その場での自分一人で判断しなければならないことが多い」とおっしゃいました。確かに、病院では常に誰かがまわりにいてすぐに相談できます。しかし、在宅医療においてはそうはいかない、より個人の判断に任されるところが大きい。よりいっそうのスキルが必要だと感じましたし、スタッフ間で互いのスキルを信頼しあっていなければできない医療だと感じました。
3日目の講義において、先生が「在宅医療は外来の延長。在宅診療では病人をみるのではなく、障害者をみるという感覚。病院では治療を行うもの。在宅診療では生活+予防医療の実践。これからはこういった医療の形が増えてくるだろう」と話されていたのも印象に残りました。さらに先生は「今のナカノの医療はこれから先の日本の医療だ」ともおっしゃっていました。確かに、先生のおっしゃるとおりではないかと感じた。その体制、IT化をとってもこれからの医療に必要なことと感じました。
今回の実習は私が医師として働いていく上で、これからの日本の医療を考える上で非常に貴重な体験だったと思います。中野先生をはじめ、スタッフの方々にはお忙しい中非常に熱心かつ丁寧にご指導頂き、本当にありがとうございました。この貴重な体験を自分の中だけでとどめるのではなく、たくさんの友人たちと共有し、これから医師として働くための助けにしていけたらと思います。本当にありがとうございました。