ナカノ在宅医療クリニックでの実習を通して
鹿児島大学医学部6年 比嘉 那優大
ここ最近、ニュースや新聞などで在宅医療という言葉をよく目にしますが、実際に具体的にはどのようなことが行われているのかほとんど知らなかったので、ナカノ在宅医療クリニックで在宅医療について学べて良かったと思います。ナカノ在宅医療クリニックで見学したことは何もかも新鮮で驚きの連続でした。まず、驚いたのは医師と看護師、理学療法士や事務員などの合同カンファレンスで、職種間の壁がなくお互いに密接に連携して治療方針やケア方針についてディスカッションが行われていました。今までは、医師同士、看護師同士、理学療法士同士の同職種ごとのカンファレンスは見たことがありましたが、様々な職種の人々が集まって行うカンファレンスは見たことがなかったのでとても新鮮でしたが、同時に非常に合理的だと思いました。また医師と看護師の間に壁がなく、活発なディスカッションが行われており、これからの医療はこうあるべきだと思いました。
実習を通して一番驚いたのは、病院に入院しているときはあと余命幾ばくもない末期癌の患者さんが、在宅医療に切り替え、自宅に戻ったとたんに元気を取り戻すケースがあるということです。確かに、末期癌が治ることは難しいですが、在宅医療に切り替えると宣告された余命よりも長く生きQOLが向上する患者さんがいるということです。やはり、環境は治療と同じくらい重要なものなのだと実感させられました。これから高齢社会になり、癌の患者さんはさらに増え、病院のキャパシティにも限界があります。また医療費を過剰に増加させないためにも在宅医療の普及は重要であると思いました。
ナカノ在宅医療クリニックでの実習を通して感じたことは、「治療」よりも疼痛コントロールや呼吸管理、体液バランスなどの「全身状態の管理」に重点を置いている印象を受けました。全身状態を管理しているからこそ、病院にいたときよりも在宅医療に切り替えたほうが良い方向に向かうのだと思います。今まで病気は治療するものだと思っていた私にとって、全身状態を管理しつつ病気とうまく付き合っていくという考えは新鮮でした。
また、中野先生の話はとても面白く、興味深いことをたくさん話していただきました。中でも、「高齢になれば様々な体の不具合が出てくる。それを疾患と捉えるのではなく加齢に伴うハンディキャップと捉えて、そのハンディキャップとうまく付き合っていくことが重要だ」という先生の言葉には非常に考えさせられました。また、高齢の患者さんは複数の疾患を合併していることが多く、その患者さんのQOL向上のためにどの疾患をメインにコントロールしていくべきかのバランスが非常に重要であり、臓器や疾患を診るのではなく、患者全体を診て治療方針を決めることの重要性も学びました。在宅医療では、患者さんの生活背景や家族背景なども考慮して総括的に診なければならないところが難しくもあり、また魅力でもあると思います。この実習を通して感じたことは、あまり既成概念にとらわれすぎず、柔軟な思考をもって臨機応変に対応することの大切さを学びました。3日間という短い間でしたが、貴重な経験ができて良かったと思います。
中野先生をはじめ看護師、理学療法士、事務員の方々には大変お世話になりました。ありがとうございました。